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甲府地方裁判所 昭和42年(ワ)284号 判決

原告

斉藤久男

ほか五名

被告

龍王運送有限会社

ほか一名

主文

一、被告らは連帯して、原告斉藤久男に対し金一四二万二四九二円、原告手塚久恵、同斉藤康男、同崎野康美、同斉藤康彦に対し各金三七万一六二四円、およびこれらに対する昭和四二年一一月九日から右各完済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

二、右五名の原告らのその余の請求ならびに原告斉藤睦子の請求は、これを棄却する。

三、訴訟費用は一〇分し、その二を原告斉藤久男、その各一を同手塚久恵、同斉藤康男、同崎野康美、同斉藤康彦、同斉藤睦子の各負担とし、その余を被告らの連帯負担とする。

四、本判決は、第一項につき原告斉藤久男において金三〇万円、原告手塚久恵、同斉藤康男、同崎野康美、同斉藤康彦において各金七万円の担保を供するときは、それぞれ仮に執行することができる。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告ら

1  請求の趣旨

被告らは連帯して原告斉藤久男に対し金四八一万一四三七円、同手塚久恵、同斉藤康男、同崎野康美、同斉藤康彦に対し各金一六三万六九一八円、同斉藤睦子に対し金二〇〇万二一一四円、ならびに右各金員に対し昭和四二年一一月九日から右完済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

2  仮執行の宣言

二、被告ら

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第二、当事者の主張

一、原告ら

(一)  請求原因

1 原告らと訴外斉藤君忠の関係

原告斉藤久男は、訴外亡斉藤君忠(明治四一年一二月二五日生、昭和四二年六月四日本件自動車事故により死亡)の夫、原告手塚久恵は右君忠の長女、原告斉藤康男は君忠の次男、原告崎野康美は君忠の次女、原告斉藤康彦は君忠の三男、原告斉藤睦子は原告斉藤康男の妻である。

2 被告会社と被告森本との関係

被告龍王運送有限会社(以下被告会社という)は貨物運送を業とする会社であり、被告森本譲治は右被告会社の運転手として雇われている従業員である。

3 本件の事故と被告森本の過失

被告森本譲治は、昭和四二年六月四日午後四時二五分頃、被告会社所有にかかる大型貨物自動車(山梨一え八一四七号)を被告会社の営業のため運転して、山梨県中巨摩郡白根町上今諏訪一七九六番地先県道を東進中、被告森本は同所にあるバス停留所前において訴外斉藤君忠が対向車線上停車中のバスより下車して、当該バスの後方を道路の反対側に横断せんとしたのを発見したのであるが、このような場合、右貨物自動車の運転者である被告森本としては、対向車である停留所において停車中のバスの後方から、下車した者が道路を横断するため突然自己車両の進路前方に出てくることのあることは、しばしば予測されることであるから、この点に注意を払つて前方を注視し、バスの横を通過するときは、いつでも停止し得るように減速徐行し、かつ警笛を発する等をして、自車の進路上を横断せんとするものに対して、事故を未然に防止し得る態勢を整えて進行すべき業務上の注意義務があるにかかわらず、右注意義務を怠り、漫然と進行した過失により、自車の前部を右訴外君忠に激突せしめよつて訴外君忠をして右大腿骨骨折、頭蓋骨骨折等の重傷を負わせ、同日午後四時五〇分頃死亡せしめた。

4 亡君忠の得べかりし利益

(1) 亡君忠(死亡当時満五七年七月)は身体壮健であり、夫の原告久男が数年前の自動車事故のため労働力を失い、農業に従事することができず、かつ町政に参与しているため、家事一切はもちろん田約三反歩、畑約九反歩の耕作はすべて亡君忠がやつており、右耕作による年間収益は金一七万二九六〇円であつた。

(2) また亡君忠は農耕のかたわら養豚を経営しており、右養豚による年間収益は金一〇七万四四四三円であつた。その詳細は別表一記載のとおりである。

(3) 亡君忠の農業収益ならびに養豚による収益の合計は金一二四万七四〇三円であり、亡君忠の一カ年の生活必要経費を金二〇万円としてこれを差引くと、亡君忠の年間収益は金一〇四万七四〇三円となる。

(4) 亡君忠は死亡当時は五七年五ケ月で健康であり、平均余命は厚生省発表の平均余命表によれば一九・二四年であるので、あと一〇年は稼働可能であつた。そこで右年間収益金一〇四万七四〇三円を基礎として、将来得べかりし利益をホフマン式計算によつて算出すると金八三二万一五一二円となる。これは亡君忠が逸失した利益である。

(5) たゞ亡君忠の右死亡により、すぐ自動車損害賠償保障法に依る保険金一五〇万円の交付を受けているので、右金員を充当すると、亡君忠の逸失利益は金六八二万一五一二円となる。

5 原告久男の損害

(1) 原告久男は亡君忠の配偶者として右逸失利益金の三分の一に当る金二二七万三八三七円を相続した。

(2) また原告久男は亡君忠のため葬式費用金九二万六〇〇〇円、香典返し費用金一一万一六〇〇円を支出した。

(3) なお妻君忠の不慮の事故による死亡により精神的肉体的苦痛を蒙つた。これに対する慰藉料を金一五〇万円と評価する。

(4) 以上(1)ないし(3)を合計すると金四八一万一四三七円の損害を蒙つた。

6 原告手塚久恵、同斉藤康男、同崎野康美、同斉藤康彦の損害

(1) 右四名の原告らは、亡君忠の子として前記逸失利益金の三分の二に当る金四五四万七六七四円の、四分の一である金一一三万六九一八円をそれぞれ相続した。

(2) 右原告らはその母君忠を不慮の事故で失い精神的苦痛を蒙つた。これに対する慰藉料をそれぞれ金五〇万円と評価する。

(3) 以上(1)(2)をそれぞれ合計すると、右原告ら四名はそれぞれ金一六三万六九一八円の損害を蒙つた。

7 原告睦子の損害

原告斉藤睦子は当時甲府市役所に事務吏員として勤務し、月給金三万一〇〇〇円(年間金三七万二〇〇〇円)の支給を受け、生活必要経費を一カ月金一万円とし、(年間金一二万円)年間金二五万二〇〇〇円の純収益があつたところ、亡君忠の死亡により家庭に女手がなくなつたため、退職するのやむなきに至つた。姑である亡君忠の稼働年数を一〇年として、その間市役所に勤務できる可能性があつたのであるから右退職により右収益を失つた。その得べかりし利益をホフマン式計算により算出すると、金二〇〇万二一一四円となる。原告は右金額相当の損害を蒙つた。

8 右原告らの損害は、被告森本が過失により亡君忠を死亡させたことによるものであるが、被告森本が被告会社の従業員としてその営業のため、その所有にかかる本件車両を運転して発生したものであるから、被告会社は自動車損害賠償保障法第三条により、右各損害を賠償する義務がある。

9 よつて、原告らは被告らに対し、右5ないし7の各損害金、ならびにこれに対する本訴状送達の翌日である昭和四二年一一月九日から右完済にいたるまで民事法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めるものである。

(二)  被告らの抗弁に対する反駁

抗弁事実は否認する。

二、被告ら

(一)  請求原因に対する認否

1 請求原因1、2の各事実は認める。

2 同3の事実のうち、被告森本が被害者(亡斉藤君忠)を発見しながら前方注視減速等の注意義務を怠つたためとある点および被告森本に過失があるとの点は否認し、その余の事実は認める。

3 同4ないし7の各事実のうち、保険金一五〇万円の支払のみ認め、その余の事実は争う。

4 同8の事実のうち、被告森本が被告会社の営業のために本件車両を運行した事実は認めるが、その余の事実は否認する。

5 同9の事実は否認する。

(二)  主張

1 逸失利益について

(1) 亡君忠の農業による年間収益を金一七万二九六〇円と主張するが、君忠の死亡後の原告方の農業収益が増加している点からみて、金一三万八四七〇円とみるべきである。

(2) 養豚業による収益を金一〇七万四四四三円と主張するが、別表二のように金四四万九五六三円とみるべきであり、かつ従来種豚八頭のところ、君忠の死亡後の現在でも種豚二頭以上飼育しているのであるから、君忠死亡による減少額は、その四分の三の金三三万七一七二円というべきである。

(3) 右農業および養豚業による収益は、亡君忠の労働のみによつて得られたものではなく、亡君忠の労働寄与率はそのうち一〇分の八というべきである。

(4) また亡君忠の労働可能年数は労働の性質上向後五年とみるべきである。

(5) したがつて亡君忠の年間収益は、農業収益金一三万八四七〇円、養豚収益金三三万七一七二円、合計金四七万五六四二円の一〇分の八の大略金三八万円となる。これから年間生活費金二〇万円を控除した金一八万円が純収益であるといえる。これに五年間のホフマン係数(四・三六四)を乗じた、金七八万五五二〇円をもつて亡君忠の逸失利益とみるべきである。

2 葬儀費用等について

(1) 原告が葬儀費用として主張する金九二万六〇〇〇円中には、香典返しと同質のものが金四二万六一六五円が含まれており(別表三のとおり)、また各種団体の寄付金が金四万一〇〇〇円ある。

(2) 香典返しおよび右寄付金は賠償すべき損害にはあたらない。

(3) よつて葬儀費として妥当な額は金三〇万円というべきである。

3 原告らの慰藉料は合計金三〇〇万円とみるべきである。

4 後述のように、本件事故につき亡君忠にも過失があつたのであるから、損害額の算定については、この亡君忠の過失を一〇分の三とみるべきである。

5 そうすると原告らの主張につき認めうべき全損害額は、右1ないし3の合計金四〇八万五五二〇円の一〇分の七の金二八五万九八六四円である。

6 ところで原告主張のように強制保険金として金一五〇万円が支払われているので、これを控除すると、金一三五万九八六四円が認められる損害額ということになる。

7 原告睦子の主張する損害は、本件事故と法律上因果関係がない。

(三)  抗弁

1 亡君忠の一方的過失

被害者(亡斉藤君忠)は、自宅近くの停留所でバスを降り、バスが発車した際その後部から、道路を横断すべく駈足で飛び出したため、右バスと対向して進行して来た被告車の運転者である被告森本は、急制動をかけたが間に合わず同人に衝突したものであつて、亡君忠は折柄の降雨で急いでいたもののようであり、道路の左右をよく注意することなくバスの直後を駈足で横断しようとしたために本件自動車事故は発生したものである。したがつて、本件自動車事故は、亡君忠のバス直後からの不注意な駈足横断の過失によつて生じたものというべく、被告らに自動車の運行上過失なく、また被告車には構造上の欠陥機能の障害は存しなかつたから、原告らの請求は失当である。

2 かりに被告らに、自動車の運行上何等かの過失があるとしても、右のような亡君忠の重大な過失は当然過失相殺として斟酌せらるべきものである。

第三、証拠〔略〕

理由

第一、原告らの身分関係、被告らの関係

請求原因1、2の各事実は当事者間に争いがない。

第二、本件事故の発生

請求原因3の事実のうち、被告森本の注意義務および過失をのぞき、その余の事実は当事者間に争いがない。

第三、被告森本の過失

一、〔証拠略〕によれば、

(一)  本件事故現場附近の県道は幅員約六・〇米であり、本件事故は山梨交通バスの上今諏訪停留所付近であること。

(二)  被告森本は、本件車両を運転し、時速約五〇粁で東進していたこと。

(三)  被告森本は、右上今諏訪停留所にバスが一台停車しているのを、約一〇〇米手前において認めたこと。

(四)  被告森本は約五〇粁の速度のまま接近したが、当時は相当強く雨が降つていて、バスに乗り降りする客の姿はよくわからない状況であつたこと。

(五)  右被告車とバスのほかには、その中間に通行人や自動車はなく、バスの後方にも対向車等はなかつたこと。

(六)  被告森本は、右バスの左側(進行車線上)を、バスとの間隔を約一米位おいて通過しようと考え、右速度のまま進行し、バスに接近したときバスが発進しかけていたこと。

(七)  すると、右バスの後方から、女性(亡君忠)がハンケチを被り、その端を両手で持つて、小走りに被告車の進路上を右から左に横断しかけているのを、被告森本は右ななめ約一二・〇米の地点に発見し、直ちに急制動をかけたこと。

(八)、しかしながら亡君忠を避譲することができず、被告車の右前部を君忠に激突させ、前記認定のように死亡させたこと。以上の諸事実を認めることができる。右認定を左右するに足る他の証拠はない。

二、右認定の各事実からすれば、被告森本は右バスが停留所に停車しているのを約一〇〇米前方から認めており(時速約五〇粁だと秒速約一四〇米弱であるから、バスとすれちがうまでわずか七秒強にすぎない)、かつ当時乗降客の確認も出来ないくらいに雨が強く降つていたのであるから、被告森本としては、バスから下車した歩行者が、バスの後方から道路を横断しようとして、自車の進路上に進出することのあることを予測し、速度を減速して徐行し、バスの後方を十分に注視し、かつ警笛を吹鳴して自車の接近を知らせるなどの処置を講じ、衝突等による事故の発生を未然に防止しなければならない業務上の注意義務があつたというべきである。にもかかわらず、被告森本はこれを怠つて漫然約五〇粁の速度のままバスの後方を注視することなく進行したのであるから、この点に過失があつたものというべきである。したがつて亡君忠の過失の有無は格別として(後述)、本件事故は被告森本の過失により発生したものといわなければならない。この点の被告らの抗弁は理由がない。

第四、被告らの賠償責任

被告会社は貨物運送を業とする会社であり、被告森本はその従業員であつて、被告森本は被告会社所有の本件車両を運転してその業務に従事中に、本件事故を惹起したものであることについては、当事者間に争いがない。そして本件事故は右第三において認定したように被告森本の過失によることが明らかであるから、本件事故によつて原告らが受けた損害につき、被告森本は民法第七〇九条により、被告会社は自動車損害賠償保障法第三条により、連帯してその賠償をなすべき義務がある。つぎに原告らの損害額について検討する。

第五、亡君忠の逸失利益

一、農業による収益

1  〔証拠略〕によれば、原告方の農業収益は昭和四一年度は金一三万八四七〇円、昭和四二年度は金一七万二九六〇円であることが認められる。

2  〔証拠略〕によれば、原告方の農業は、ほとんど亡君忠が一人でとりしきり従事していたことが認められるので、右所得は原告久男の名義にはなつているが、実質は主として亡君忠の労働による収益とみることができる。

3  しかしながら君忠はすでに認定したように昭和四二年六月四日死亡しているところから、農業収益の特質上昭和四二年度は、その農産物の多くの収穫前にすでに労働していなかつたといわなければならないので、原告方の農業収益を亡君忠の労働による収益だとしても、逸失利益の基礎となる年間収益は昭和四一年度の収益によるのを相当と解する。したがつて主として亡君忠の労働による農業年間収益は金一三万八四七〇円であると認められる。右認定に反する〔証拠略〕は措信できない。

二、養豚による収益

1  原告らは養豚による年間収益について別表一のように主張する。そして〔証拠略〕によれば、別表一のような計算も可能であることが窺われる。しかしながら右各証拠と〔証拠略〕と対比すると、とくに飼育労働費、もと畜費、肥育豚および子豚の販売価格等に大きな相違のあることが認められる。そこで甲第一九、第二〇号証および証人手塚の第二回証言の信用性について検討する。

(1) まず肥育豚についての算出のうち、その頭数を一四〇頭と計算している。これは証人笹本金雄の証言によりその成立が認められる甲第四号証の合計一〇三頭と、証人手塚の証言(第一回)によつてその成立が認められる甲第三号証についての同証人の証言による三七頭の合計数だと推測される。そうであるならば右甲第三、第四号証はいずれも原告方の肥育豚の販売金額であるから、右一四〇頭(種豚四頭を含む)を計算の基礎として維持する以上、その一頭についての平均販売価額をも右甲第三、第四号証によつて算出して然るべきである。こころみに右甲号証の合計金額から種豚四頭分の価額を除した金二二三万一一二三円を一三六頭で商すると(種豚の価額は高価であるから肥肉豚の平均販売価額を算出するさいはこの分を控除すべきである)金一万六四〇五円となる。しかるに甲第二〇号証においてはその作成者手塚千秋は一頭の販売価格を金一万六九〇八円としている。この価額は、飼育労働費四、四三八円、飼料費八、七七〇円もと畜費三、七〇〇円の合計額である。以上の点からするならば、一四〇頭を前提とするならば金一万六九〇八円は根拠がなく、金一万六九〇八円を維持するならば一四〇頭は根拠がないということになろう。要するに右各数字は計算の基礎を欠いているものといわねばならない。

(2) つぎに肥育豚の飼育労働費を四四三八円と計上しているが、〔証拠略〕によつても、その合理的根拠をなんら求めることはできない。

(3) つぎに肥育豚のもと畜費を三、七〇〇円としているのに、飼料費は八、七七〇円としている。これを前掲甲第九号証によるものと畜費五、三三七円、飼料費八九七六円と対比すると、もと畜費において一、八三七円の差があるのに飼料費は二〇六円の僅差でしかない。もつとももと畜費の計算時の、子豚の生育日数の差異による数字の差とも考えられないことはないが、それならば右各甲号証はいずれも訴外手塚千秋の作成にかかるものであるから、生育日数の差による飼料費に当然増減があつて然るべきであるのに、その点の考慮はなされていない。すると甲第九号証のもと畜費を甲第二〇号証のように変更した合理的理由はみいだし難い。

(4) また肥育豚については甲第九号証には経費として「その他六四七円」を計上していたのに、第二〇号証にはなく、子豚については甲第一〇号証には経費として「賃料料金四四四円」「母豚償却費三五四円」「その他二七七円」を計上していたのに、第一九号証にはそれらの費目がなく、たゞ「種付料二〇〇円」が計上されているだけである。これらの経費は販売価格を異にするからといつて、その経費が消滅するものではないからなんらかの説明があつて然るべきであるのに、これを認めるに足りる証拠はみあたらない。

(5) さらに甲第一九号証の子豚の飼育労働費一四八二円は、肥育豚のそれと同様にこれを首肯するに足りる証拠はなんら見あたらない。

(6) なお甲第一〇号証によれば飼料費二九〇六円を計上しているのに、甲第一九号証では七四円と一九四四円を合計しても二〇一八円にしかならない。もつとも前にのべたように子豚の生後日数の差ということも考えられるが、それならば子豚が生れて肥育豚になる全飼育費ならびに飼料費を対比してみると、甲第九、第一〇号証によれば一万一八八二円であるのに、甲第一九、第二〇号証によれば一万〇七一八円であつて、一頭につき一一六四円の大差が認められる。しかるにこのように飼育関係の減額については合理的な説明はなされていない。

(7) 以上述べたように証人手塚千秋の第二回証言は、一応原告方の実情に則して純収益を算定したとはいうものの、算定の資料となつた甲第一九ないし第二二号証、第二四号証はいずれも同証人が第一回の証言をした(昭和四四年七月二四日)後である昭和四五年三月二〇日に自ら作成しているのであつて、右説示のように計算の方法、数額とくに飼育労働費に合理的根拠を欠いていることが認められるうえ、弁論の全趣旨に徴しても右各証拠の客観的証拠価値は乏しく、いずれも措信できないといわざるを得ない。したがつて原告主張の別表一のような養豚による年間収益の計算と数額を証するに足りる証拠はないというほかはなく、右主張による純収益額を認めることはできない。

2  しかしながら〔証拠略〕によれば、原告方の昭和四一年六月ごろから昭和四五年五月末までの養豚による売上げは金二三六万六一二三円あつたことが認められるのであるから、そこになんらかの純収益があつたものと推測することができる。

ところで右金額に相応する肥育豚の販売頭数は、一応一四〇頭となつているが、すでに述べたように甲第四号証には価額の異なる種豚四頭が含まれており、また甲第三号証から三七頭を算出した証人手塚の算出方法もたんなる推量を出ず、一方原告久男は第一回の本人尋問の結果では子豚一七〇ないし一八〇頭と述べているなどの点からすれば、右販売頭数を正確に一四〇頭と確定することは直ちにはできないといわねばならない。頭数が確定しない以上右総売上額から肥肉豚一頭の平均販売価額を算定することはできないことになる。このような場合、総売上額は確定しているのであるから、純収益を合理的に算出するには、平均的な販売価額に対する平均的な純収益の割合を求め、この比率によつて算出する方法によるのが最も妥当な方法であると解される。証人手塚千秋の第一回証言と、同証人の作成にかかる甲第九、第一〇号証も、結果このような方法を妥当としてなされていることが認められるのである。被告主張の別表二の算出方法もおおむね同様な方法によつておりその点においてはその計算の方法は理由があるといえる。

(1) そこで〔証拠略〕によれば肥育豚一頭あたりの平均飼育労働費は三、〇八三円であり、平均販売価額は一万六二二五円であり、その占める割合は〇・一八九であることが認められる。この飼育労働費が家族労働費である場合、経営上の収益になることは通常認められるところである。

(2) つぎに飼料費のうち自給飼料費が収益に属するか否かについて検討すると、農家が自己の田畑において収穫した飼料を使用する場合、その収穫を農業による収益として計上しているならば、その分を養豚の収益として計上することは二重になるので妥当でない。しかしながら農業上の収益として計上せず、たんに飼料として使用する場合は、それらの飼料を使用することにより購入飼料の割合が減少するし、販売価額は同額を維持できるわけであるから、結局家族労働費と同性質のものということができ、飼育労働費と同様に養豚の収益とみることができると解する。これを本件についてみると、〔証拠略〕によると、原告方では自己の畑で収穫した野菜類を自給飼料として使用していたことが認められ、かつ前掲の農業所得(〔証拠略〕によれば原告方の耕作面積は田三七〇九m2、畑八九九五m2であることが認められる)と対比して、この分を農業収益として計上してはいなかつたものと推認される。したがつて本件の場合、自給飼料に相当する分は養豚による収益として計上するのを相当とする。しかしながら証人手塚の証言(第一回)および前掲甲第九号証による自給飼料一、七九五円は、乙第一二号証の説明と対比するとき、その養豚数(正確にはわからないとしても少なくとも年間総計一〇〇頭は優に超えるのであるから、常時数一〇頭は同時に飼育していたものと推測される)に比較して購入飼料との割合が過大にすぎ、その合理的根拠を欠いているといわなければならない。甲第九号証の飼料費八、九七六円は乙第一二号証の生産費の表のうち全調査農家欄の八九七六円と一致することが認められるから、この価額を飼料費として計上するならば、そのうちわけの購入飼料と自給飼料の価額も同欄の額によるのを相当とする。そうすると購入飼料八、一二六円に対して自給飼料八五〇円の割合であることが認められる。この八五〇円の一頭の平均販売価額一万六二二五円に対する割合は〇・〇五二であることが計算上認められる。

(3) そうだとすると肥育豚一頭の販売価額に対する原告方の純収益の占める割合は、〇・一八九と〇・〇五二を加算した〇・二三一であるということができる。

(4) そこで原告方の肥育豚の総販売価額は前記認定のように金二三六万六一二三円であるから、これに〇・二三一を乗じた金五四万六五七四円が肥育豚の一年間の純収益であると推計することができる。

3  つぎに子豚の販売による収益について検討する。

(1) この場合も肥育豚と同様の方法によつて算定するのが相当である。〔証拠略〕によれば、子豚一頭についての飼育労働費は九二七円、自給飼料費は三三九円であつてその合計は一、二六六円となり、その平均販売価額は四、九〇八円であることが認められるので、その割合は〇・二五七となる。これが一頭の販売価額に占める純収益の割合だといえる。

(2) 〔証拠略〕によれば、原告方は右同期間中に訴外大久保重幸に対し子豚九頭を金三、七〇〇円にて売却したことが認められる(前掲甲第二四号証にも一一頭売却の記載があるが、この書証が措信できないことはすでに述べたとおりである)。そうする販売価額の合計は金三万三三〇〇円となる。

(3) そこで右金額に前記〇・二五七を乗ずると、金八、六五八円となる。これが子豚の販売による純収益であると認められる。

4  以上認定したところから金五四万六五七四円と金八六五八円とを合算した金五五万五二三二円が主として亡君忠の養豚による原告方の純収益であるということができる。

5  被告は、君忠の死亡後も種豚二頭以上飼育しているから君忠の死亡による減少額は、その四分の三と算定すべきであると主張するが、死亡後の経営状態は他者によるものであつて、君忠の死亡前の収益を算定するにあたり、このことを考慮に入れることは妥当ではない(同様のことは農業による収益についてもいえる)、むしろそのことは原告方における亡君忠の労働寄与率の割合の程度として勘案されるべきことである。

三  以上原告方の主として亡君忠による昭和四一年度(養豚については昭和四一年六月から昭和四二年五月末まで)の農業および養豚による年間収益は、金一三万八四七〇円と金五五万五二三二円を合算した金六九万三七〇二円であることが認められる。

ところですでに認定したように原告方の耕作している田は三七〇九m2、畑は八九九五m2であつて合計一万二七〇四m2(一町二反八畝九歩)となり、〔証拠略〕によつてみても田二反四ないし五畝と、畑五反を耕作していたことが認められ、かつ養豚においては常時子豚ないしは養育豚が数一〇頭いたことが認められるのであるが、これらの膨大な農業および養豚の全労働を、亡君忠一人で行つていたとは経験則上到底考えられない。必らず他者の労働力を必要としたものというべきである。そこで農業と養豚と区別して勘案すると、農業においてはその耕作面積に比較してその所得が低いところから、自家以外の労働力を経費として計上したことが推認できるのであるが、それにしても原告方で亡君忠たゞ一人が農業に常時従事していたとするとはできない。そこで諸般の事情を考慮して亡君忠の労働寄与率は八割とみるのを相当とする。したがつて右農業による収益のうち亡君忠の所得とみるべきものは金一三万八四七〇円に〇・八を乗じた金一一万〇七七六円であるというべきである。つぎに〔証拠略〕によれば、養豚における経営能力は最低二・六人最高二・八人であつて、到底一人でやれるものでないことを示している。そして前に収益として計算した飼育労働費中には、雇入れによる場合をも含んだ上での計算である。原告方のように常時数一〇頭を飼育しているような状況にあつて、亡君忠が主としてその経営に従事していたとはいえ、右の資料および経営規模から考慮すると、亡君忠の労働寄与率は七割であると算定するのが相当である。したがつて養豚による収益のうち、亡君忠の所得とみるべきものは金五五万五二三二円に〇・七を乗じた金三八万八六六二円であるということができる。

以上の認定から亡君忠の死亡時の一年間の所得は、金一一万〇七七六円と金三八万八六六二円とを合算した金四九万九四三八円であると認めるべきである。

四、逸失利益の算定

1  亡君忠の一年間の生活費は金二〇万円とみることについては当事者間に争いがない。右所得からこれを控除すると亡君忠の一年間の純所得は金二九万九四三八円となる。

2  すでに認定したように、亡君忠は死亡時五七年七月であつたから、公刊物である運輸省自動車局保障課作成の「政府の自動車損害賠償保障事業損害査定基準」によれば、その就労可能年数は八・二年であることが認められる。しかしながら農業および養豚のような重労働に女性である亡君忠が六六年近くまで従事できるとは考えられないので、就労可能年数は七・〇年と認定するのを相当とする。

3  そこで亡君忠の逸失利益は、その年間所得金二九万九四三八円に七・〇年のホフマン係数(六・五八九)を乗じた金一九七万二九九六円であると認められる。

第六、原告らの損害額

一、原告らの亡君忠に対する相続分

1  原告らは亡君忠とそれぞれ夫または子供の関係にあることは、すでに認定したとおりである。それによれば右亡君忠の逸失利益につき原告久男は民法所定のその三分の一を原告久恵、同康男、同康美、同康彦はそれぞれ六分の一を相続したことが認められる。

2  したがつて原告らの前記逸失利益の相続分は、原告久男が金六五万七六六五円、右四名の原告各自につき金三二万八八三二円であることが認められる。

二、慰藉料

妻でありまた母である君忠を、不慮の事故により一瞬にして失つた原告らの精神的苦痛に対し、これを藉やすに足りる慰藉料を、亡君忠の家庭における地位、労働力、年令、また原告らの諸事情等を勘案し、原告久男につき金一五〇万円、子である右四名の原告につき各金五〇万円と認めるのを相当とする。

三、原告久男が支払つた葬儀料など

1  〔証拠略〕によれば、右諸入費控帳(甲第八号証)は亡君忠の葬儀に関する一切の費用を記入したものであることが認められる。右によれば支出の合計額は金七二万八八一五円

(記載の不明な点は否認)となる。

また〔証拠略〕によれば、亡君忠の葬儀にとものう香典返しの引出物として金一一万六〇〇〇円を支出したことが認められる。

2(1)  しかしながら、いわゆる香典返しなるものは、葬儀にとものう必要経費とは認められないのであるから、これを損害額とすることはできない。したがつて右金一一万六〇〇〇円を損害額とする原告の主張は理由がない。

(2)  なお被告は別表三のように、右金七二万八八一五円のうちには香典返しに相当する支出が含まれているので、それらは控除さるべきであると主張する。

〔証拠略〕によれば、別表三の1の金二三万二〇〇〇円の引出物は香典返しに相当することが認められる。同様な趣旨から別表三のうち2、10、12、16、17を除き、その余のお茶砂糖、風呂敷は、いずれも香典返しと同質のものと推認できる。以上合計すると金二八万二一五七円となるが、これらはいずれも損害額にあたらないので控除することにする。しかし別表三の2(酒)、10(まんじゆう)、12(かんずめ二個)、16、17(まんじゆう)は、会葬者または参会者に対するふるまいと見られるものであつて、食事と同等視するのを相当とするから、香典返しと同視することはできない。

(3)  なお被告は、原告主張の金額のうちには諸団体に対する寄付金四万一〇〇〇円が含まれており、この金も葬儀費にあたらないと主張する。右(2)挙示の証拠によれば、右主張事実が認められ、この寄付金も香典返しに相当するものというべきであるから、損害額から控除することにする。

3  以上認定したように葬儀費用に相当しない額の合計は金三二万三一五七円となるので、これを金七二万八八一五円から控除すると金四〇万五六五八円となる。〔証拠略〕から認められる原告久男の社会的地位、亡君忠の年令、家庭、社会的な事情、他の原告らの社会的な状況および君忠が本件の事故で不慮の死を遂げた事情など一切を考慮すると、右金額程度の葬儀、初七日および七々忌の供養はとくに過大というにあたらない。したがつて葬儀等の費用は金四〇万五六五八円と認めるのを相当とする。右認定に反する原被告の各主張はいずれも理由がない。

四、原告ら(原告睦子をのぞく)の損害額

以上一ないし三において認定したところからすると、原告久男の損害額は金二五六万三三二三円、他の亡君忠の子供である四名の原告らの損害額はそれぞれ各金八二万八八三二円であることが認められる。

五、原告睦子の損害額

1  〔証拠略〕によれば、君忠が生存中は被告睦子は甲府市役所に勤めていたが、君忠が死亡したので、右を退職し家事農事に専念することになつたことが認められる。しかしながら家族の死亡により他の家族に一身上の変化が生じ、右のように退職のやむなきにいたり、従前どおりの給料が貰えなくなつたとしても、原告睦子は亡君忠の後をうけて農業および養豚に従事しそれによる収益をあげていることは、〔証拠略〕から認められるところであるから、原告睦子の退職による給料の不受は、亡君忠の死亡による損害とは相当な因果関係を欠くといわなければならない。したがつて原告睦子の本訴請求は理由がない。

第七、過失相殺の抗弁について

一、本件事故は被告森本の過失に基づくことは、第三において認定したとおりである。一方亡君忠の行動についてみるに、第三において認定したように亡君忠は降雨で見とおしがよくきかない状況の下に、停車したバスの直後を、頭にハンカチを被り、その端を両手で持ち、左右の安全を確認しないまま右バスの陰から道路にとび出し、小走りで道路を横断せんとしたものである。雨中であつて傘をもたないためいそいでいたとはいえ、かかる横断のし方は、横断すべき道路の左右とくに左側のバスの対向車の有無を確認すべき歩行者としての注意義務を明らかに怠つた過失があるといわなければならない。この過失は、右のような過失の程度および被告森本の過失などの事情を勘案して四分の一と認定するのを相当とするこの点につき被告らの抗弁はその割合を除き理由がある。

二、右過失の程度を、前記原告らの損害額の算定にあたり斟酌すると、原告久男の損害額は金一九二万二四九三円、他の亡君忠の子である四名の原告らの損害額はそれぞれに各金六二万一六二四円であることが認められる。

第八、強制保険金の充当

一、原告らに対し、すでに自動車損害賠償保障法による強制保険金一五〇万円が支払われたことについては、当事者間に争いがない。その額を相続分に応じて按分すると、原告久男につき金五〇万円、その他の右四名の原告それぞれにつき金二五万円となる。

二、右充当額を、前記第六の二の各損害額から控除すると、結局原告久男の損害額は金一四二万二四九三円、その他の右四名の原告の損害額はそれぞれにつき金三七万一六二四円であることが認められる。

三、右二の原告らの損害額ならびにそれぞれの金額につき訴状送達の翌日である昭和四二年一一月九日から右各完済にいたるまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払につき、被告らは連帯してその支払をなすべき義務があるといわなければならない。

第九、結論

以上認定したところから、原告ら(原告睦子をのぞく)の本訴請求は、右第七の二の金額の限度において理由があるからこれを認容し、その余の請求および原告睦子の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用は民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を適用して、主文第三項のようにその負担部分を定め、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 石丸俊彦)

別表一 養豚経営による亡君忠の一年間の収益(原告主張)

一、子豚の生産による一年間の収益

(1) 種豚8頭を飼育し、それによる一年間の子豚生産は160頭

(イ) 子豚1頭の売却価額(生後45日) 3,700円

(ロ) 同上160頭の売却価額3,700円×160=592,000円

(2) 経費

(イ) 種豚の飼料 1頭につき38,880円

8頭につき38,880円×8=311,040円

(ロ) 子豚の飼料 1頭につき 74円

160頭につき74円×160=11,840円

(ハ) 種付料 1回2,000円 1頭につき2回

8頭につき2,000円×2×8=32,000円

合計((イ)+(ロ)+(ハ)) 354,880円

(3) 一年間の収益 592,000円-354,880円=237,120円

二、肉豚の生産による年間収益

(1) 肉豚としての売却価額 1頭につき 169,008円

140頭につき169,008円×140=2,366,123円

(2) 経費

(イ) 子豚買入価額 1頭につき3,700円

140頭につき3,700円×140=518,000円

(ロ) 売却までの飼料 1頭につき7,220円

140頭につき7,220円×140=1,010,800円

合計((イ)+(ロ)) 1,528,800円

(3) 一年間の収益 2,366,123円-1,528,800円=837,323円

三、養豚による一年間の収益

237,120円+837,323円=1,074,443円

別表二

一、養豚業における飼育労働費

(一) 「昭和42年肥育豚の生産費」(農林省統計調査部作成)による全国平均の

1 肥育豚1頭の生産費

(1) 飼料労働費 1,869円 11.1%

(2) 飼料費 8,976円 53.2%

(3) もと畜費 5,338円 31.6%

(4) その他 674円 4.1%

以上合計 16,857円 100%

(5) 地代、資本利子 534円

以上合計 17,391円

2 肥育豚1頭の販売価額 16,225円

(二) 「昭和42年子豚の生産費」(同上統計調査部作成)による全国平均の

1 子豚1頭の生産費

(1) 飼育労働費 927円 19.0%

(2) 飼料費 2,906円 59.3%

(3) 賃料料金 444円 9.0%

(4) 母豚償却費 354円 7.2%

(5) その他 277円 5.5%

以上合計 4,908円 100%

(6) 地代、資本利子 345円

以上合計 5,253円

2 子豚1頭の販売価額 4,076円

(三) 肥育豚1頭の飼育労働費の割合

1 同上(一)のもと畜費の子豚は生後69日であり、(二)の子豚は生後49.5日である。したがつて49.5日から69日までの飼育労働費は次のように推計できる。

(1) (二)の(1)の飼育労働費の販売価額に対する割合を求めると

4,076円÷927円=22.74%

(2) (一)の(3)のもと畜費中にはこの飼育労働費がふくまれているが、それは上記22.74%との割合と解する。

5,338円×0.2274=1,214円

(3) したがつてもと畜費自給の形態における肥育豚1頭あたりの飼育労働費は

1,869円+1,214円=3,083円 となる。

(4) この3,083円の販売価額に対する割合は

3,083円÷16,225円=0.19 となる。

二、原告方養豚業の収益について

1 上記の計算による養豚業の収益は厳密ないみではないことになるが、飼育労働は全部家庭労働とみると、飼育労働費がその収益となろう。

2 原告方の昭和41年6月から同42年6月までの1年間の豚売上高は合計2,366,123円である。

3 飼育労働費のしめる割合は

2,366,123円×0.19=449,563円

この449,563円をもつて原告方の1年間の養豚費による収益とみるべきである。

別表三 葬儀費用中香典返しと同質の支出一覧表(甲第8号証による)

〈省略〉

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